「青森県動物愛護管理推進計画」(案)についての意見
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ワンニャンを愛する会としての意見
*県の案(茶色の文字)に対する、会の意見(黒色の文字)

                             
 1 「第4 動物の適正飼養及び保管を図るための施策に関する事項」

 @「 2 巡回指導等の強化」
 1)犬・ねこの遺棄対策について、本計画(案)には盛り込まれていません。ぜひ、盛り込んでいただきたいと考えます。
 遺棄対策を重点においた巡回指導等も行い、毅然とした姿勢を示していただきたい。
 遺棄は犯罪です。遺棄防止に向けて、警察や地域の防犯協会等と連携した「捨て犬・捨てねこ防止キャンペーン」を展開するなど強化策を講ずる必要があります。 違反者を特定した場合は、指導や警告に留まらず、司法当局に告発を行うなど厳しい措置をとるべきです。

 2)各保健所管内にボランティア方式で動物愛護推進員を配置し、動物愛護及び管理行政の充実を期していただきたい。

  3)動物を取扱うにあたっては、法令を遵守し、動物愛護の考え、適正飼養の方法に基づかなければなりません。各駐在(保健所)においても、抑留施設が法令に適合するのはもちろん、衛生・換気等に配慮し、動物愛護の観点からできるだけ苦痛、恐怖感を与えない抑留環境とすべきです。 抑留動物に対しては、給餌・給水を怠りなく、犬については散歩も必要です。扱い方を改善して抑留管理を行うべきです。 抑留動物の世話には、状況を判断して、地域からボランティアを募り、活用を考えてみてはいかがでしょうか。

 4)動物愛護及び管理行政の充実に向けて、センター駐在職員の中の1名を、愛護関連業務を強化する動物愛護担当職員、または動物愛護推進員として兼務させ、内部統制を高める必要があると考えます。 指導・監督する立場にある者は模範を示さなければなりません。仮に、抑留環境等が劣悪だったり、県民に対しての応対が問題視されるならば、職権による指導・監督だとしても世論の支持は受けられず、批判は免れないのではないでしょうか。

 ※参考事例 昨年4月5日(県保管文書では3月5日)、県内のある保健所管内で、目撃した地元住民によれば月齢2〜3か月程度の子犬2頭(県の説明では推定6か月〜1歳未満)が、凶暴性があり、捕獲困難という理由により麻酔銃で射殺されたことがありました。このような適法性に疑義を抱かせる事例その他を繰り返さないためにも、内部統制の強化は必要と考えます。

 A「3 繁殖制限措置の推進」
 本項に「安易な繁殖を抑制するため」とありますが、繁殖を意図する者は、繁殖を「安易」とは考えていないはずです。 安易な」の文言を削除して、繁殖制限の指導方針を強調すべきです。

 B「4 所有者明示の推進」
 マイクロチップは所有者明示に効果的と考えられます。しかし、マイクロチップを普及させるには、マイクロチップの登録情報を確実、迅速、容易に把握できる環境が整備されていなければなりません。 よって、各駐在に携帯型スキャナー(読取器)を早急に常備していただきたい。動物病院、市町村、警察にも携帯型スキャナーの常備を促す周知活動を行うべきです。

 C「5 犬の返還の推進」
 1)迷い犬の返還については、狂犬病予防法第6条により、県及び市町村が取り組むべき業務となっています。警察では、迷い犬は遺失物として所有者が存在する財物として処置しています。 一方で、行方不明になった愛犬が帰って来るのを今か、今かと待ち焦がれている方も少なくありません。この中には、愛犬を話し相手として慈しんでいたお年寄りや、情操を育む途中の子どもたちもいます。 しかし、迷い犬が捕獲された場合、現状では約9割が所有者不明犬として致死処分されています。 動物愛護、生命尊重及び県民のための遺失物の返還向上を目指す観点から、迷い犬の返還には積極的に取り組むべきです。

  2)県では現在、捕獲情報を文字情報だけのファクスによって、捕獲地の市町村に通知し、これを受けた市町村は公示場所に掲示しています。 このファクスによる方式を「写真付き電子メール」に変更することによって、住民は迷い犬の特徴をよりわかりやすく、具体的に眼で確認できるようになります。

 3)「写真付き電子メール」は、受けた側では「転送」も簡単にできます。 この「転送」機能によって、公民館・学校等の多数が集会する場所に捕獲情報を広く、早く伝達させることができます。これによって情報の伝達範囲は広がり、飼い主の所在確認につながると考えられます。

  4)現在、捕獲情報は捕獲地の市町村のみへの通知となっています。狂犬病予防法第6条を弾力的に運用し、捕獲地が他の市町村との境界に近い場合は、近接の該当市町村にも「電子メール」の「同報」機能で通知することによって、情報の伝達範囲はさらに広がり、飼い主の所在確認につながると考えられます。

  5)迷い犬情報は、現在、センターのホームページで「写真付き」で提供されています。これは「写真付き」での情報提供が、文字だけによる情報よりも視覚に訴え、効果的であることを理解しているからだと思います。 通知方法として「写真付きの電子メール」を採用する場合にはシステムを一部変更しなければなりませんが、これについては現在稼動中のホームページのソフトを一部変更するだけで対応できるはずです。

 6)迷い犬の返還の向上を目指すことは、致死処分数を削減するという国の基本指針及び本計画の策定目的に完全に合致します。 よって、通知方法は「写真付きの電子メール」とし、伝達範囲を「捕獲地の市町村及び捕獲地と境界が近い近接する市町村」とし、返還の向上には積極的に取り組んでいただきたい。

 7)なお、国及び県は、行政事務の効率化を促すために、インターネットの利用を奨励しています。さらに厚生労働省は昨年5月、譲渡等を促進するためにインターネットを利用するよう旨の指導を、保健所を管轄する都道府県等に対して行っています。

 ※参考事例 1月下旬、六ケ所村発行の鑑札、予防注射済票を着けた中型犬(雑種)が東北町で捕獲されました。六ケ所村と東北町が防災無線で呼びかけたところ、無事、飼い主の元へ戻っています。

 D「6 犬・ねこの引取頭数の減少及び譲渡の推進」
 1)犬・ねこの引取りの半減目標は、大いに賛成です。しかし、「命」の大切さの啓発、「終生飼養すること、又は、動物愛護団体等への相談等、動物に生存の機会を与えるよう指導」といった啓発・指導という手法のみで半減を達成できるのか、懸念を持たざるをえません。 大掛かりな各機関、県民挙げてのキャンペーンが必要と考えます。

 2)これを行ったとしても、年間を通して大量の引取り依頼(持込み)となる事態は相当期間続くと考えられます。こういう中にあって、譲渡について成果を上げるためには積極的な推進策が求められます。

 3) 譲渡の成果を上げるには、譲渡の機会を広げるとともに、様々な方法で取り組む必要があります。 希望者には適宜、譲渡できるような仕組みにすべきであり、動物愛護団体が希望した場合にも譲渡できるようにしていただきたい。

 4)犬・ねこの引取り依頼(持込み)があった場合は、新たな飼い主が見つかるよう動物愛護団体へ相談することを勧める旨が、本項及び「第6 4 動物愛護団体との連携」に記されています。このことから、愛護団体も譲渡対象になれると解釈できます。 仮に、引取り依頼(持込み)者へ相談を勧める際は愛護団体を利用すべき位置づけとし、一方で、譲渡の際は対象外と判断しているならば、協力、連携して動物愛護及び管理行政を進めるという方針と相容れないのではないでしょうか。

 5)本項では「子犬・子ねこの引取りを求める者に対しては…中略…繁殖制限措置の指導を行います」とありますが、「繁殖制限措置の指導を行います」を「繁殖制限措置を譲渡の条件とします」に変更し、譲渡される場合の繁殖制限措置は任意ではなく、必要な条件とすべきです。

 E「9 飼い主のいないねこ等に対する取組み」
 1)飼い主のいないねこを「地域ねこ」として、地域での生存を受入れ、愛護団体や地域の有志等が一定のルール、合意に基づいて世話する考え方があることを、広く周知していただきたい。

 2)愛護団体、または地域住民から県に対して当該案件について、協議の仲介依頼が寄せられた場合は引き受けていただきたい。 このような場合、地域で活動する動物愛護推進員がいれば調整しやすいと思われます。

 3)ねこの収容については傷病の場合を除いて、出向いて収容(捕獲)する法的根拠はないと考えます。この措置を行う場合は慎重を期すべきです。

 F「10 動物由来感染症対策の調査研究
 動物由来感染症の調査研究は、健康上の安全・安心を図り、 動物由来感染症 についての正しい知識を育む観点から極めて公益性が高い事業であると考えます。
  よって、計画段階から公表して理解を深めるようにしていただきたい。
 対策・予防には相当の時間がかかるわけであるから、調査研究の結果は遅滞なく公表していただきたい。

 G「11 県民意識の調査」
 各種資料から犬・ねこについての考え方、接し方、飼養方法等において地域差がかなりあることが推定されます。
 よって、地域での対策を的確に講じることができるように、調査設計と実施には過誤がないように注意すべきです。

 H「12 引取頭数等の目標」
 1)平成18年度を基準年度としていますが、同年度は、犬については迷い犬返還が217頭から145頭へ、譲渡が378頭から106頭へと激減。致死処分数は過去10年間で初めて増加し、17年度は1 ,650頭でしたが、18年度は1,752頭となっています。ねこについては、譲渡が115頭から18頭へと異状に激減しています。 本計画(案)をまとめるにあたり、センターが開設された18年度の後退状況を検証しなかったことは甚だ遺憾です。
 
 2)動物愛護、生命尊重についての姿勢、力量が問われる譲渡、返還が激減している18年度を基準年度として、致死処分削減目標を設定しているのは不適当であると考えます。 10年の年月をかけて本計画を実施するのであれば、社会的条件や飼養嗜好の変化等を考慮しつつ、動物愛護及び管理の好ましい状態を想定し、目標をさらに高く設定すべきです。

 3)犬の引取り(持込み)数について半減を目標とし、これを達成した場合を想定し、そのまま致死処分削減数に算入しています。  しかし、「返還促進、譲渡の推進、その他施策による致死処分頭数削減数」の目標では、10年間での社会的条件や飼養嗜好の変化等によって、また過去の経年変化の動態により、迷い(捕獲)犬の減少が想定されるにもかかわらず、この減少分を目標設定から排除しています。 迷い(捕獲)犬の減少をある程度想定し、この減少分を致死処分削減数に算入すれば、本計画(案)にある致死処分削減目標30%より高い目標値の設定が可能となります。

 4)逸走防止を重点とした大規模なキャンペーン等を伴なった啓発・指導強化を重ねて行い、学習・訓練の場等を設けるなどして、計画最終年度の平成29年度の時点で、迷い(捕獲)犬については2割減少を目標にすべきと考えます。 lこれを達成できれば、捕獲は18年度実績1 ,134頭から907頭(1,134×0.2)に減少となり、227頭が致死処分を免れることとなります。 さらに、前述した「1 第3 犬の返還の推進」」について提案した返還策を積極的に展開するなどして、返還目標を3割と設定し、これを達成した場合、907頭のうち272頭(907×0.3)が致死処分を免れることとなります。これらに引取り(持込み)半減で達成する376頭を加えれば、譲渡数を算入せずとも致死処分削減数は合計875頭となります。 迷い(捕獲)犬の減少化、返還の促進を積極的に行い、目標達成できれば致死処分は1,752頭から877頭へ、約5割へと大幅に減少させることができます。 これには譲渡を含んでいません。譲渡の実績しだいではさらに致死処分削減を見込むことができます。 以上のことから、本計画(案)では致死処分削減、返還、譲渡の目標は過少となっていますので、上記のように見直すべきです。

 5)ねこの「致死処分頭数削減数」の目標については、「譲渡の推進、その他の施策による」として、10年先の目標でわずか3%、45頭削減と設定しています。  18年度譲渡実績18頭に加えた場合、譲渡数は63頭となりますが、これは17年度譲渡実績115頭の半分程度でしかありません。この目標では致死処分に軸足を置いているのかと疑念を抱かざるをえません。 本計画(案)の致死処分削減、譲渡のそれぞれの目標は過少となっていますので、少なくとも平成15年度譲渡実績125頭、16年度同133頭、17年度同115頭のレベルまで回復するように見直すべきです。

  6)迷い犬の返還、犬・ねこの譲渡の向上については、高率を実現している自治体もあります。どのような施策を行っているのか、謙虚に事例を学び、行政運営に活かしてほしいものです。

2 「第5 動物の愛護及び管理に関する普及啓発に関する事項」

 @「1 飼い主のモラル向上を図る施策」
 適正飼養の啓発は重要ですので、「しつけ方教室」は積極的に実施していただきたい。 センター本所以外でも実施し、地域に偏ることなく、なるべく多くの県民が参加できるようにしていただきたい。

3「第6 動物の愛護及び管理に関する施策を実施するための必要な体制の整備に関する事項」

 @「関係団体等との体制整備」
 県民の目線に立った動物愛護及び管理行政に向けて、公募による県民も参加して意見を述べることができる協議機関等を、センター本所及び各保健所(駐在)管内にボランティア方式で設置し、ここでの意見を酌み上げて行政運営に活かすべきです。
 
 A「4 動物愛護団体との連携」
 1)本項において「県民から犬・ねこの引取りを求められた場合、新たな飼い主が見つかるよう動物愛護団体へ相談することを勧めます」とあります。動物愛護団体の対応力を適宜把握したうえで、安易な判断に流れることがないように慎重な運用を求めます。

  2)本項で示されているように、センターと動物愛護団体が協力、連携する場面も少なくないと考えられます。過大な期待、不必要な誤解を避けるためにも意思の疎通を図る機会を定期的に設けるべきです。

  B「7 災害時対策」
 災害時対策についても各機関との連携が不可欠です。 前述した「3 第6@ 1 関係団体等との体制整備」で提起した「協議機関等」を活用し、平常時から対策を練っておき、想定される事態に備えるべきです。

 C「8 県民への情報発信」
 1)動物由来感染症に関する調査研究 前述「1 F「10 動物由来感染症対策の調査研究」」を参照

 2)ホームページの充実 「動物の愛護及び管理に関する情報(実績、調査結果等)」については、17年度までに各保健所から発行されていた『事業概要』の中の「狂犬病予防及び動物保護関係」に則って、各駐在(保健所管内)ごとの詳細な実績、数値を公表していただきたい。 これは実態を県民と共有し、問題解決に向けての基礎資料であり、信頼できる動物愛護及び管理行政を推進するためにも必要だと考えます。

 3)各広報等の活用 メディアが迷い犬情報の新聞掲載、または放送を申し出た場合は、積極的に情報提供を行い、活用すべきであると考えます。

平成20年2月29日
ワンニャンを愛する会